涙の意味
若者は約2年半、フリータと言われる状態で働いていた。
自分なりの将来を考えたのだろう、先週、就職が決まったと会社を後にした。
彼は約1年、毎週3日ほど大手企業のWebメンテを主目的に派遣先で働いた。
世間で言う、非常におとなしく、自分から積極的に意見できるようなタイプではなかった。
派遣先でも与えられた仕事を黙々とこなす一方、余計なコミュニケーションは皆無だった。
はたから見れば、不器用さが一定の距離を作り、また、それが故にもどかしいジレンマを形成することもシバシバあった。
退社の挨拶も自発的にできず、半ば照れくさいような、格好悪いような、そんな雰囲気が感じ取れた。
最後の日、玄関先まで見送ってくれた派遣先の二人、心からの激励と門出にあたっての励ましの言葉をかけてくれた。
彼の目から、一筋の涙がこぼれた。
この一週間、彼は自分が色々な人達の関係で成り立ち、また、親身に自分のことを考えて接していてくれた事実に気づき始めていた。
本来人間としてあまりに当たり前の環境でも、彼は2年半、それを素直に受け入れる心が育っていなかったのだろう。
皮肉にも退社を通じ、涙の瞬間、彼は一番大きなモノを人間として得て去っていった。
頑張れ! 若者。


